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  • ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか-NHKスペシャル取材班-書評

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    内容

    2012年に放送されたNHKスペシャル「ヒューマン なぜ人間になれたのか」の取材記。動物は本能で行動を起こすが、我々人間には動物にはない心があると考えている。本書では人類が誕生直後から現代人と変わらぬ精神や心を持っていたのか、その答えを探し求める内容となっている。

    感想

    本書の取材は南アフリカのブロンボス洞窟から始まる。ここでは、およそ10万年前に我々人間と同じ種であるホモサピエンスが生活していた。この洞窟から様々な出土品が出てきているが、この出土品からも人間の心を発見することができる。例えば、オーカーという赤い石。これは、身体に赤色を塗って「おしゃれ」をするために使用されていた。10万年前でもおしゃれをしたいという抽象的な目的があったということが分かる。このように、人類の起源から取材や現地調査を通じて心とは何かを探っていく。

    興味深かった所を挙げるとキリがないので、特に伝えたいことを挙げると、「人間の心には二面性がある」ということ。一つは仲間と協力やコミュニケーションを取り合う心。もう一つは、抗争や暴力を振る舞う心。暴力の心があることは残念だが、その心を真逆の心で抑えることができるのもまた人間だ。全人類にコミュニケーションを取り合う心があるということは忘れないようにしたい。

    それにしても、NHKの取材力は凄まじい。仮説を立て、検証が必要な時はその分野の知識人を世界中から探し、インタビューを行い、可能であれば現地調査まで付いて行く。じゃあこれはどうなんだ?、これはどうなるんだ?と、新しいことを知ることで生まれる新しい疑問に次々と答えてくれ、とても清々しい。疑問に答えてくれるのは、生物学、人類学、考古学、脳科学、心理学など様々な分野の研究者たち。お金、交渉力、体力がないと実現し得ない、個人でやるには非常に困難であることをNHKはやってくれた。

    我々、ホモサピエンスが生まれ故郷のアフリカを出土したと言われるのが約5万年前。現在も、世界中で見つかる化石や生活の痕跡から世界中の研究者たちが人類について研究している。本書にはその研究の内容が詰まっており大変お得な一冊となっている。文庫本で600ページ弱とかなりのボリュームだが、読む価値は十分過ぎるほどある。今年の個人的ベスト5に確実にランクイン。

    ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか (角川文庫)[Kindle版]
    posted with ヨメレバ
    NHKスペシャル取材班 KADOKAWA / 角川書店 2014-03-25
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