大前研一 世界を知る6つの特別講義 -大前研一-書評
内容
本書は世界的な経営コンサル会社のマッキンゼー日本元社長である大前研一氏が監修しているビジネス雑誌(大前研一ビジネスジャーナルNo1〜No3)を基に編集・構成された内容となっている。感想
本書の基となっている「大前研一ビジネスジャーナル」は読んだことがないのだが、どのようなことが書かれている雑誌なのか気になって、3号分まとめられていてお得な本書を読んでみた。そもそもの「大前研一ビジネスジャーナル」とは著者主催の経営者向け勉強会の講義内容が記されている雑誌である。本書のはじめにも、経営者の立場になって読んでほしいと書かれているが、多くの人が「経営者になってから考える」と悲観している。経営者というのは、明日それをやれと言われたら、「それなら元々考えていました」と言えなければダメだと忠告している。
歯に衣着せぬ物言いでかなり辛辣なコメントが多いが、納得するところも多く参考になった。例えば、第1章の「ビジネスモデルを知る」では、ららぽーたーやイオニスト(ららぽーとやイオンのショッピングモールで消費の全てを賄う人々)をターゲットとした小売が好調であることを紹介している。彼らは失われた20年の被害者ではあるが、消費者としては非常に魅力的で小売企業は積極的に狙うべきだとアドバイスしている。一方で、日本の未来を考えるなら彼らに対して「世界を見ろ」、「大志を抱け」と言うべきだが、もうそれは手遅れで彼らは聞く耳を持たないから諦めろとキツイ言葉をはいている。安倍首相は三本の矢とか言う前に気概を持った若者の育成に力を入れるべきだと、韓国のグローバル人材の育成の例を出しつつ、忠告している。
「イノベーション」についての章では日本企業が世界に向けた革新的な製品を生み出せない理由について様々述べている。その中でも特に分かりやすかったのがお掃除ロボットのルンバについて。日本でもお馴染みになったルンバは世界で500万台以上売れており、日本でも35万台ほど売れている。当時は日本のメーカー各社も「作ろうと思えばかなり良いものが作れる」と言っていたが以下の理由で作らなかった。
・仏壇にぶつかって、ろうそくが倒れて火事になるかもしれない。
・階段から落下して下にいる人に当たる可能性がある。
・よちよち歩きの乳幼児を倒してケガをさせる危険性がある。
しかし、ルンバが売れるのをみるや否やお掃除ロボットを売り始めた。これが、今の日本企業だ。
2014年頃の雑誌の内容なので若干情報が古いところはあるが、本質的な所をついていることが多く読んでいて参考になった。また、うまくまとめられているので、章ごとの分量もちょうどよく読みやすい。著者の雑誌は今も継続して発刊されているので購読していきたいと充分に思える内容であった。企業の経営について学びたい人にオススメの一冊。