ITシステムの罠31-安茂 義洋-書評
内容
企業がITシステム導入時に失敗する罠について、経営層、ユーザー部門、システム部門の三者に対して説明する内容となっている。
感想
私はベンダー側に所属しているが、ユーザー側のシステム導入時の失敗要因についても気になるので読んでみた。企業に勤めているとITシステム導入に失敗したという話はよく聞くこと。また、新聞などのメディアで取り上げられていたりもする。本書では失敗する要因を「罠」と呼び、「システム投資」、「プロジェクト運営」、「調達・契約」、「システム保守」、「組織運営」の各フェーズの罠について紹介する内容となっている。また、それぞれの罠ごとに経営層・ユーザ部門・システム部門の三者それぞれに対して要注意ポイントを提示している。
例えば、業務改革プロジェクトが発足した場合についての要注意ポイントは次のように挙げられている。
経営者:「ITシステムありきで進めると不必要なシステム投資を行わないように注意しなければならない。」
システム部門:「ITシステム再構築が本当に必要かどうかを見極め、経営者にも臆せず進言しなければならない。」
ユーザー部門:「もし業務改革プロジェクトが行き詰ってもITのせいにしてはいけない。」
また、個人的に共感できた内容は次の著者の主張である。
「日常生活ではネットやパソコンのITに慣れていても、いざ自社のITシステム課題となると、経営層やユーザーは自らをIT素人と決め込んで、システム部門に丸投げしていないだろうか。」
そう、まさに私の拙い経験の中でも同様のことがあった。ユーザ部門の人が「私は素人だから」という立場をとった途端に、どんなに説明しても聞く耳を持たなくなってしまうのだ。それ以来、システム導入時は関係者全員が責任を持って自分ごととして捉えられる雰囲気を作ることが何よりも大事なことだと感じている。
本書は企業内のシステムに関わる人は楽しみながら読むことができると思う。きっと「あるある」とうなずく場面が多々あるはずだ。