総理-山口敬之-書評
内容
本書の著者はTBSで長年ジャーナリストとして活躍した人物。本書では、2000年から政治部の所属となり、政界人に密着取材してきたリアルな情報を元に、安倍首相が首相を辞任してから復活するまでのドラマが描かれている。感想
ちょうど衆議院総選挙が始まるタイミングに読んでみた。amazonの評価も高いこともあり、面白かった。私自身、政治家とは全く縁もゆかりもなく、生まれてこのかた対峙して話をしたこともない。なので彼らがどういった思いで、どんな風に仕事をしているのかよく分かっていなかった。その点について、本書は詳しく教えてくれるので、とても興味深かった。少なくとも本書に出てくる政治家はちゃんと日本のことを考えてくれていた。
著者は周りから批判されるほど政界に密着しており、特にこれは、と目に付けた人物に対してはとことん密着する。その中に安倍首相がおり、その立役者の菅官房長官や麻生副総理がいた。著者は彼らのメッセンジャー役も暗に務めており、普段テレビ等では見られない彼らの人間くささがよく見られた。口語も多く、安倍首相や麻生副総理はイメージ通りの口調であった。
個人的に興味深かったのが靖国神社参拝について。2013年に麻生副総理と安倍首相がアメリカの反対を押し切って立て続けに参拝を行った。これはアメリカ側に「NOと言える日本」だとアピールするための戦略だったそうだ。安倍首相のすごいところは裏で戦後最悪とまで言われていた日米の関係を回復させる算段を持って実行したことだ。詳細は本書に譲るが、この二年後に安倍首相はアメリカ議会にて演説する場を創りあげた。
本書では人となりだけでなく、安倍首相と周りの要人の思想や、今まで活動してきた政策についても書かれている。2017年に、衆議院総選挙で安倍首相率いる自民党が大勝し、まだ当分は現政権が続くだろう。願わくば本書の続編にも期待したい。本書は、堅苦しさを除いて今の「総理」とはどんな人なのかを知りたい人にオススメできる一冊だった。